bookart

テキストには18cから語り継がれてきた『マザーグース』を想定していた。が、特定の書物からテキストを選び出すことの意味づけができず、さまざまな言語で紡がれた物語のイメージを手縫いのステッチによって抽象的に表現することにした。

ページに用いたのは、製本では補強用に使用される寒冷紗。ヤシの実を特徴づける要素である繊維のイメージから採用したが、寒冷紗の白さと糊付けによる張りが気になり、柿渋で染めてみた。やわらかい風合いが出たことにより、風や波に乗って種子散布されるさま、時間の流れや伝播などが感じられるようになったと思う。

いよいよ最終段階に入って、ページ中央に文字を判読できるオリジナルの詩をガリ版で刷って挿入。さらに栞紐の先にタネを仕込み、「うけつがれつながる」ことを目に見えるかたちに落とし込んだ。

じつは「土に埋めると変化する本」という裏コンセプト(!?)もあり。土中の微生物により素材が自然に還り文字が消えるころ、タチアオイ(古来は薬草として用いられ、ヨーロッパからアジアに分布。花言葉は豊かな実り)が姿を現す、かも。

– 奥付 –
●わたしのしごと / コンセプトと構成・デザイン・イラスト・詩・ステッチ・造本のほか、寒冷紗や紙など一部使用素材の柿渋染め
●つかったそざい / タイのサーペーパー(カバー表)、楮染紙柿渋仕上げ(カバー裏・表紙)、柿渋染紙(表紙裏)、竹のコハゼ、能登の杉皮紙(見返し)、ネパールの綿メッシュ漉き込み紙(詩を印刷した紙)、綿寒冷紗、絹糸、麻糸
●もじのあしらい / タイトル文字は手描き、詩はガリ版印刷、奥付はデジタル印刷
●しこまれたたね / タチアオイ(ホリホック ロゼアホワイト)のタネ
OTAブックラボ 二○二三シーズンテーマ 「有機/無機」作品 
制作  一部
二○二四年 東京